三つの地方に分かれた広大な福島県

三つの地方に分かれた広大な福島県

豊かな大自然、幕末を感じる史跡。「会津地方」

福島県が日本で三番目に大きな県であるということを知っている人は少ないかもしれません。一番はもちろん北海道、二番が岩手県、そして三番目に福島県が位置します。福島県はその三つの中でも地域によって大きく異なり、かつそれぞれの地域が分かりやすい特色を有する県であると言えます。東西に長い形の福島県を、西の内陸地から順に見ていきましょう。最初は「会津(あいづ地方)」です。

「会津地方」は福島県の三つのエリアの中で最も緑あふれる地方といえます。また江戸時代から幕末の世にかけて活躍した多くの会津藩士たちの活動拠点だったという背景上、福島の地で最も歴史的な香りの感じられる地方でもあります。多くの史跡、重要文化財があり、福島の歴史に触れる観光を望む方にとっては、この会津地方こそ適した選択といえるでしょう。豊かな自然は起伏も激しく景観に飽きを覚えません。「城めぐり」を趣味に持つ人もやはり、この会津の地の鶴ヶ城を見ずして福島県をあとにするわけにはいかないでしょう。神社仏閣も多く建ち、古来日本の山岳に根付く伝承や、それらと宗教が融合して生まれた独自の文化が見られるはずです。

会津地方は太平洋に面した福島県に属しているものの、福島県を縦に貫く奥羽山脈(おううさんみゃく)の西側に位置しているため、海側の福島県とは地形的に隔てられたような形になっています。気候としても奥羽山脈の東側とではまったく異なり、日本海側気候帯に属しています。

果物栽培で有名な福島の姿は「中通り」にあり

福島県を三つのエリア、すなわち西の会津地方、中央の中通り、そして東の太平洋に面した浜通りに分けているのは、福島県を縦に分断する二つの山岳の存在です。東側で会津地方と中通りを寸断しているのが奥羽山脈。西側で中通りと浜通りを分けているのが「阿武隈高地(あぶくまこうち)」です。阿武隈高地もかつては奥羽山脈のような大規模な山脈だったと考えられますが、今は浸食が進み、なだらかな山地となっています。「中通り」は、そんな阿武隈高地と奥羽山脈に挟まれるようにして若干窮屈そうに存在している縦長の地方です。ここは会津地方ほど山深くなく、けれども海に面した地方の特色も持たないいわば山と海の中間地点に位置する地方です。そういった地方の特色としては、平地に恵まれるようであれば一般的に農業が盛んに行われ、農業を中心にして発展してゆきます。県の特産品と呼ばれるものの多くも、このような中間領域で生産されます。この「中通り」もご多分に漏れず、全国有数の果物収穫量を誇る福島県の農業をほとんどまかなっていると言って良いほどに、この「中通り」地方では田畑が多く見られます。

「中通り」の観光名所としての魅力は、咲き誇る桜の名所が多いことに象徴されるように、山に囲まれ、自然に同調する街並みとその風景にあるでしょう。大自然に触れることを望むならばより険しい山々に近い「会津地方」という選択肢に軍配が挙がりますが、「大自然」とまではいかない穏やかな「自然」、すなわち、花見などの人々が暮らしの中で育んできた草花や植物と触れ合う文化を重んじる性格が、この「中通り」には根付いていると言えるでしょう。温泉地も数多くありますが、これもやはり、人と自然の交わりによる文化ですね。「霞ヶ城」や「南湖公園」も見て回りたいポイントになるでしょう。また、全国的な果物の産地であるということも忘れてはなりません。食の面でも大いに期待できるでしょう。

太平洋に面した「浜通り」は福島県の賑わいそのもの

福島県の東端、つまり太平洋に面した沿岸地方がこの「浜通り」になります。どの都道府県にも言えることですが、沿岸地域といえば多くの場合はその県内で最もインフラが発達した都心部であり、中核的役割を担う賑やかな地方です。「浜通り」にもおおむねそのような傾向が当てはまると言って良いでしょう。身の幸は豊富で食の食べ歩きには困りませんし、リゾート地としての色合いが強いため、そういった目的で訪れる観光客に向けた陽気なレジャー施設が多数備わっています。「環境水族館アクアマリンふくしま」は家族で訪れたい大人も子供も楽しめるスポットとして定番です。「スパリゾートハワイアンズ」では南国衣装に身を包んだフラガールの踊りを堪能し、「塩屋崎灯台」からは太平洋の絶景が見渡せます。近くにホテルを取っていれば、早起きして朝日を見に行くのもいいでしょう。帰りには漁港付近で朝獲れの新鮮な魚介を味わえるはずです。――味わえたはずです。

福島県の浜通りといえば、その沿岸部で原発事故のあった地方です。事故の被害の影響で一部の地域は立ち入りの制限がかかっているため、訪れる際にはその点に留意する必要はあるでしょう。しかしながら立ち入り禁止地区はごく一部であり、浜通りは広いため、そう過敏になる必要もありません。復興作業は今この時も着々と行われていますが、その復興を阻害する要因の中で非常に大きな割合を占めているのが風評被害です。正しい情報をしっかりと取り込み、過度な悪評を立てたり、また必要以上に福島県産の食品を避けるなどの行動は慎むべきかもしれません。もちろん、食品の安全性に関してはどれほど国際的な機関による厳正な検査が行われているとはいっても、生命を保証することは誰にもできません。最後は自己判断に頼るべき選択ですが、福島で生産された商品に買い手がつかなければ、福島の復興は全く見通しの立たないものとなってしまうのも厳然たる事実です。

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