火山活動が生んだ秘境『高千穂峡』（宮崎県） | 風俗のお仕事コラム

高千穂峡（たかちほきょう）は宮崎県の高千穂町にある五ヶ瀬川（ごかせがわ）上流の峡谷一帯を指す呼称です。国の天然記念物に指定されるほどの名勝地として有名で、透き通りながらも吸い込まれそうな濃紺の水面をボートで遊覧するイベントは毎年大盛況です。

阿蘇のカルデラを形成した火山活動によっておよそ12万年前に噴出した溶岩が原型となる「高千穂峡」は、通常の峡谷に比べダイナミックな景観を特徴としています。100メートルにも達する断崖絶壁が7キロメートル以上続いており、これらの総称が「高千穂峡」となります。1965年にはこの一帯が祖母傾国定（そぼかたむきこくてい）公園に指定されている。国定公園とは国立公園に準じる称号で、著名な景勝地に許される栄誉あるものです。

「真名井の滝（まないのたき）」は高千穂峡の名所となっていて、多くの観光客を呼んでいます。日本の滝百選にも数えられるその滝は川幅の特に狭まった場所に落ちてくる比較的細い滝で、はるか上の「おのころ池」から流れ落ちています。この滝には神話がかかわっており、それによれば、「天村雲命（あめのむらくものみこと）」という神が地上に降り立つ際にこの地に水がなかったため水源をつくり、その水源から湧く水が滝となって流れ始めたというのです。決して豪快な流れになることはなく、ひっそりとした秘境に人知れず流れ続けているという風情の真名井の滝には神秘的な雰囲気が伴います。シーズンには夜10時までライトアップされているため、夜に訪れるとまた格別の趣を伝える景色を見ることができます。

高千穂峡の観光名物といえば何といっても手漕ぎの貸しボートに乗って静かな川面を渡るボート遊覧は毎年大人気です。しかしそのあまりの人気は平日でも早朝から長蛇の列を作り、4時間から5時間の待ち時間を発生させることも珍しくないほど。ボートに乗りたい方は計画的な行動が求められそうです。また、反対にボート遊覧を希望せず高千穂峡の景観を思うまま楽しみたいという方は夏季シーズンを避けて観光したほうがよいかもしれません。シーズンには駐車場も非常に混んでいて、車を止めるのも一苦労だそうです。加えて、シーズンは水上に多数のボートが浮かぶため、やや景観を損なうと言わざるを得ません。そうしたことを考慮して訪れる必要がありそうです。ボートは三名まで乗船できるため、大切な人との思い出作りにも最適です。

ボート遊覧では名瀑「真名井の滝」まで近づくことができ、もちろん安全性の面から近づきすぎることは推奨されませんが、そのしぶきを体いっぱいに浴びることができます。幅広の滝ではありませんが落差が高いため、水面に当たるところではやはり迫力があります。この真間近に見られるということこそボート遊覧の一つの目的といっていいでしょう。ボートはお客さんがご自身で漕がなければならないため、職員の丁寧な指導のもと、充分に安全には配慮して遊覧する必要があります。細い川面を進めば切り立った崖が影を落とし、何かアトラクションじみた洞窟にさ迷い込んだような、ファンタジックな気持ちにさせられます。

ここ高千穂の地は「天孫降臨」の伝承でも有名です。「天孫降臨」とは日本に伝わる神話において高天原の天上からこの地上に神々が降り立つ様子を伝えるくだりであり、「日本書紀」や「古事記」に記されています。高千穂の神話の中心地となっているのが「天岩戸神社（あまのいわとじんじゃ）」で、高千穂峡のボート遊覧と合わせて観光できるため、その際には訪問をおすすめします。高千穂峡の自然の中にも伝承にゆかりのあるものが多くありますので、ボートに乗りながらそれらに触れ、そして天岩戸神社でさらに深く学ぶといったコースを辿ることができれば、帰るころにはすっかり「天孫降臨」伝説のとりこになっていることでしょう。

高千穂に伝わる代表的な伝承といえば、太陽神「アマテラスオオミカミ」が弟と仲たがいして洞窟に隠れてしまったことにより、世界が暗闇に包まれてしまったという「岩戸隠れ」です。その際に「アマテラスオオミカミ」が隠れた「天岩戸」こそ、天岩戸神社が祀るご神体なのです。近辺には「天安河原（あまのやすかわら）」があり、神社から歩いて10分ほどの距離です。ここはアマテラスオオミカミが天岩戸にひきこもってしまって天地が暗闇に覆われてしまった際に八百万の神々が集まり議論を交わしたとされる場所で、河原には洞窟があり、奥に社が構えられています。神々はなんとかアマテラスオオミカミを天岩戸から出そうと様々な工夫を凝らすのですが、一向にアマテラスオオミカミは出てこない、そこで踊りに長けた「天鈿女命（アメノウズメノミコト）」が奇妙な格好で踊り始めました。すると神々は笑い、その笑い声を聞いたアマテラスオオミカミが岩戸を開けて外の様子を覗き見たことで、ようやく世界に光が戻ったといいます。