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奈良県の宝が一手に込められた奈良公園
日本最大級の都市公園、奈良公園
「奈良公園」は奈良を代表するというよりも、日本を代表する公園というべき存在です。それほど日本全体にとって非常に価値の高い文化財が多く内包されており、また樹木や花々、湖沼に岩場と、日本庭園の趣も含めて非の打ちどころのないほど完成された都市公園です。都市公園として異例の500ヘクタール超という凄まじい敷地面積を誇り、そのスケールからしても、日本のシンボルとして輝く観光地足りえる資格を備えているといえるでしょう。大部分が県や市ではなく、国の所有であり、奈良県がそれを管理しているという形です。
公園内には多くの国宝や世界遺産があり、国内外の観光客が多く訪れる一大観光地です。また名勝地と名高い公園であるにもかかわらず入場無料であり、そもそも料金所もなければ、敷地を区別する柵なども設けられていません。誰でもいつでも、365日、24時間自由に散策することができる公園なのです。奈良公園は重要文化財――いわば国の宝が豊富に詰め込まれた宝物庫のような場所ですから、そんな場所に無料で立ち入って自由に観光できるという点は、海外から訪れて至る観光地で言葉の不便など苦労を強いられる外国人観光客にとって、これ以上ない魅力といえるでしょう。日本人ならなおのこと、この公園が身近にあることに感謝したいものです。一生に一度は訪れたい名勝地ですね。また、奈良公園の多くの重要文化財ももちろん有名ですが、この公園にはまた別に、そしてある意味国宝に勝るとも劣らないほどの知名度を誇るマスコット的存在がいます。――奈良公園には、およそ1200頭の鹿が放し飼いにされています。放し飼いというよりも、野生なのですが、自由奔放にふるまう奈良の鹿がもたらす弊害も多く、しばしば人間がその対応に奔走しています。
奈良の大仏。威風堂々、東大寺
東大寺は「金光明四天王護国之寺(きんこうみょうしてんのうごこくのてら)」という非常に長い異名を持っています。奈良時代に聖武(しょうむ)天皇が国を挙げて建設した寺であり、当時の一大事業の様子は様々な文献に語り継がれています。東大寺といえば「奈良の大仏」というくらい有名な、この寺院の本尊は大乗仏教における仏、「毘盧遮那仏(びるしゃなぶつ)」です。毘盧遮那仏といえば日本で一般に広く知られている仏教の中ではあまり耳にしない部類の仏かもしれません。日本の仏教も主流は大乗仏教なのですが、その本尊、信仰対象は主に「釈迦(しゃか)」、「ブッダ」などと呼ばれる仏です。しかしブッダには実在したモデルの人物が存在しますが、しかしこの毘盧遮那仏はブッダをも超越した全宇宙で最も優れた仏であるとされる存在です。やや抽象的すぎるきらいがあるためか、あまりこんにちの仏教でその名が聞かれることは少なくなりました。「奈良の大仏」と称される東大寺、大仏殿の本尊を前にして、その堂々たる姿にため息はつくものの、その大仏の名前も知らないのでは寂しいものがあります。東大寺を訪れる際には、どうか「毘盧遮那仏」という名前を頭の片隅に置いてください。
東大寺の建立も多大な労力を要する大工事でしたが、それにも劣らずこの大仏の建設にも多くの人手が必要でした。ときの天皇はこの大仏の建設のためになんとか民衆の支持を集めようと、朝廷から弾圧されていた僧を味方に引き入れるなどして、様々な工夫を凝らしながら完成にこぎつけました。
奈良の鹿が神格化される理由、春日大社
奈良市の「春日大社(かすがたいしゃ)」は全国各地に1000社以上点在する春日神社の総本社です。「武甕槌命(たけみかづちのみこと)」、「経津主命(ふつぬしのみこと)」、「天児屋根命(あめのこやねのみこと)」、「比売神(ひめがみ)」の四柱を祭神として祀る神社であり、武甕槌命が白い鹿を伴って地上に現れたという伝承から、この神社では鹿を神の使徒とし、とても重んじています。鹿は日本のみならず世界各地で数多くの有名な伝承に登場する生物であり、古来よりその神聖を語る伝承は少なくありません。春日大社も広い目で見ればそんな鹿を神格化した神社の一つにすぎませんが、奈良の地には春日神社のほかにも鹿を神の使いとする伝承が多く伝わっており、奈良の鹿は天然記念物として保護されています。
しかし一方で、鹿は奈良の人々の悩みの種となることも少なくなく、道路に飛び出した鹿と車の衝突事故は日常茶飯事であり、過去には電車と鹿が衝突した事件もありました。また田畑を荒らすため農家の人々も閉口しており、近年では鹿を保護する団体の勢力も資金難で規模を縮小しているといいます。鹿を疎んじる一部の人々によって虐待事件が発生した例もあり、奈良県ではありがたいばかりの存在ではなくなってきているようです。
世界遺産に登録されている春日大社の建立は西暦768年とされており、この神社も古社が立ち並ぶ奈良にあって、他の神社に引けを取らぬほど古いものです。その建立のきっかけとなった武甕槌命は、日本全土のあらゆる神と交渉し、この国をより良い方向へと導こうとした偉大な功績ある存在として伝わっています。
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